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国立新美術館開館10周年・チェコ文化年事業 ミュシャ展

 

<写真1> 《ジスモンダ》 1895年 堺市

 

<写真2> 《スラヴ叙事詩「原故郷のスラヴ民族」》 1912年 プラハ市立美術館 ©Prague City Gallery

 

<写真3>《スラヴ叙事詩「スラヴ民族の賛歌」スラヴ民族は人類のために》の前で。たくさんの人が作品に見入っていました

 アルフォンス・ミュシャ。その名前を聞いてピンとこない人も、<写真1>を見ると違うかもしれません。作品自体の見覚えはなくとも、独特のスタイルはどこかで見かけた、という人が多いのではと思います。

 「ミュシャ」はフランス語発音。彼の活躍の場となったパリを中心に、そう呼ばれるようになりましたが、生まれ育ったチェコでの正式な名前は、アルフォンス・マリア・ムハというそうです。私も、そうとは知らずに「ミュシャ」の描く美しい女性や模様のファンだった一人です。しかし、今回、国立新美術館で開いている展示のテーマは、アール・ヌーヴォーを代表する彼独特のスタイルだけではありません。フランスにて人気作家となったムハ(ミュシャ)が故郷のプラハに戻り、晩年の約16年をかけて取り組んだ「スラヴ叙事詩」です。

 展示空間に入って、まず圧倒されました。約6×8メートルという巨大なカンヴァスに描かれた作品20点が並んでいます。会場にはたくさんの人が詰めかけていましたが、窮屈さも感じさせないほど、壮大なスケールの作品群。自らのルーツである祖先の歴史を調査し、ムハ独自の手法で描いたこれらは、3~6世紀から20世紀までのスラヴ民族の物語を、象徴的な場面を切り取りながら描きます。

 それぞれの作品を見ていると、時の王様や指導者など物語の中心となる人物はもちろん描かれているのですが、つい目が合ってしまうのは、むしろ名もなき人々です。多民族の侵入に怯える目=<写真2>。戦いの後に嘆き悲しむ女性。疲れた視線をこちらに向ける人。歴史という舞台において、脇役とみなされるであろう人々が抱えるひとつひとつの物語に想いを馳せるうちに、私もその場面に入り込んだかのような気持ちになります。

 ムハがこの大作に取り組んでいた当初、オーストリアとハンガリーの帝国の一部とみなされていたチェコは、1918年ようやくチェコスロバキア共和国として独立します。壮大な「スラヴ叙事詩」の最後を飾るのは、「スラヴ民族の賛歌 スラヴ民族は人類のために」=《写真3》。スラヴ民族の勝利のビジョンです。こちらは、写真撮影可能な部屋の一角に展示されていて、自由にカメラに収めることができます。テーマはスラヴ民族の勝利ではありますが、メッセージはすべての人類に向けて、自らの民族に誇りを持つ事と、平和と自由の大切さを訴えています。隣国と地続きで、常に侵略の危険にさらされてきたチェコ出身のムハからの、普遍的なメッセージは国境を越えて私たちにも届きます。だからこそ、多くの人がこの絵を前にシャッターを切らずにいられないのだと思います。

 今までの「ミュシャ」デザインのイメージとは違いましたが、浮遊感のある構図、平面的な色使いを効果的に用いる部分など、やはりそこには「ミュシャの世界」が広がっていました。アール・ヌーヴォーの第一人者。グラフィックデザイナーの先駆け的存在だったムハが華やかな世界から離れ、故郷で取り組んだ壮大な作品の数々。人を製作に駆り立てる原動力とは。そんなことを思いながら、展示会場を後にしました。

【ちょっと立ち止まって】
 チェコと言えば、可愛らしいアニメーションも人気です。5月5日(金・祝)~7日(日)には、チェコアニメの上映会も同館3階講堂にて開かれるそう。ゴールデンウィークのお出かけにいかがですか? 詳細はこちら

☆お知らせ☆
このブログ読者の中から5組10名様を、国立新美術館の「ミュシャ展」にご招待します!
締め切りは4月27日(木)。 応募はこちらから。


【展示会情報】
◇「国立新美術館開館10周年・チェコ文化年事業 ミュシャ展」
◇場所:国立新美術館 企画展示室2E
◇最寄り駅:
  東京メトロ千代田線乃木坂駅 青山霊園方面改札 6出口(美術館直結)
  都営地下鉄大江戸線六本木駅 「7出口」から徒歩約4分
  東京メトロ日比谷線六本木駅 「4a出口」から徒歩約5分
◇開催期間:6月5日(月)まで
◇開館時間:午前10時~午後6時
 ※毎週金曜日と、4月29日(土)~5月7日(日)は午後8時まで
 ※入場は閉館の30分前まで
◇休館日:毎週火曜日 ※5月2日(火)は開館
◇入館料(税込):一般1,600円/大学生1,200円/高校生800円
 ※中学生以下無料
 ※団体は20名以上
 ※障がい者とその付き添いの方1名は無料(入場の際に障がい者手帳などをご提示ください)

2017年4月20日


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