東京アート日和

BORO 美しいぼろ布展~人間はどれだけ貧しくてもおしゃれをする~

展示室入り口

男性のマネキンが頭に巻いているのは、余った端切れを繋げたもの。端に火をつけて畑作業をすれば、煙が虫除けになり、また落ちた灰が肥料にもなるという、全く無駄のない仕組みです

おしゃれなブーツ。靴底部分は鮭皮、本体はあざらしの皮でできています。鮭の背びれは敢えて残して、雪の上を歩いても大丈夫なようになっているそう

 アミューズ ミュージアム。色々な面で、ちょっと変わったミュージアムです。浅草・浅草寺の真隣、スカイツリーも大きく見える絶好のロケーションで、「BORO」、つまりボロ布を中心としたコレクションを年間を通じて展示しているのですが、まず、もともとそのコレクションの保持者であった今は亡き民俗学者・田中忠三郎が、稀に見る純粋さと情熱を持った人でした。

 青森にて1933年生まれ。父親の影響で、新しく土地が開墾されると見つかる縄文時代の土器の破片などを子供の頃から集めるようになります。就職してからも、昼は仕事、夜は発掘という生活を続け、ついには発掘に専念するため、仕事を辞めてしまいました。貯金を切り崩しながら、土器の発掘・修復を続け、縄文時代の人々の生活に想いを馳せるうちに、だんだんと市井の人々の日常生活にも興味が向くようになります。

 流通が今ほど発達していなかった時代、地元で採れる素材は麻でした。麻布に補強や保温のため綿糸で刺し子を施したり、破れたらツギハギをしたりして、何代にも渡って使われてきた布団や衣服。当時は当たり前すぎたそれらに価値を見出し、収集した田中さんの情熱と先見の明に驚きます。

 ミュージアムの特徴的なコレクションのひとつに、「女性のおむつ・腰巻き」があります。言ってしまえば下着。よそ者の学者には決して渡さないであろう品ですが、田中さんのもとには集まったということは、いかに信頼関係が結ばれていたかの証です。おかげで、今私たちは有数の「女性の下着」という歴史的資料を見ることができるのです。

 実は見るだけではなく、ここの展示品のほとんどは、撮影することも触ってみることもできます。3000年前の縄文土器ですら、むき出しで展示されています。館長の辰巳清さんが初めて田中さんに会った時、蔵の中で収集品に手を触れながら話を聞くことで、五感を通して伝わるものがあったそうです。それに近い体験を来訪者にもしてもらいたい、という思いから。田中さんにその展示方針を打診すると、「面白い!」と快諾してくれたのだとか。

 そして、洋服店のようなディスプレイ。ファッショナブルにツギハギのあたった服を着こなす男女のマネキンが迎えてくれます。アーティストのマネジメント会社「アミューズ」で、舞台の演出を手がけた経験もある辰巳さんが、もっと訪れる人の感性に訴える展示を、と模索した結果、民俗博物館ではあり得ない展示方法に行き着いたそうです。これらに触発されて、誰もが知る世界のハイ・ブランドも、BOROをテーマにしたコレクションを発表しているそうです。

 「ボド」という、生まれたての赤ちゃんを受け止めるための敷き布があります。何代も前から受け継いだ布が何層にも重ねられた「ボド」は、生まれたての赤ちゃんに、「あなたは一人で生まれてきたのではないよ」と伝えてくれるものです。展示されているものは、どれを手にとっても、一針一針の丁寧さが、家族への思いを偲ばせます。大切にされたと感じながら育つ子どもは、だからこそそんな布を大切に、次の世代にも伝えようと思う大人になるのでしょう。

 周りが見向きもしなかったものに情熱を燃やした田中忠三郎。その情熱に心を動かされ、ミュージアムをつくった辰巳館長。収集を始めた頃の田中は、自らのコレクションがいつか日の目を見ることになろうと、果たして想像できたでしょうか。一般的な博物館とは一線を画したミュージアムは、そんな感動が積み重なって出来ているのでした。

【ちょっと立ち止まって】
 アミューズ ミュージアムのビルは、6階建てです。1階はミュージアムショップ。そして、アーティストに週替わりで貸し出すギャラリーが2階の展示室入り口にあり、更に上階に行くと、藍染のTシャツなどを手がける作り手の制作過程を見ることのできる仕事部屋、さらに屋上には藍甕も置いてあり、ワークショップも開催されるのだとか。イベント会場や、レコーディングスタジオとしても使える部屋があったり、午後6時以降は浅草寺とスカイツリーを眺めながら楽しめるバーがオープンしたり。エンターテインメントが凝縮した空間です。

【展示会情報】
◇「BORO 美しいぼろ布展~人間はどれだけ貧しくてもおしゃれをする~」
◇場所:アミューズミュージアム
◇最寄り駅:東京メトロ銀座線「浅草駅」、東武伊勢崎線「浅草駅」から370m(徒歩5分)
      都営浅草線「浅草駅」から500m(徒歩8分)
      つくばエクスプレス「浅草駅」から500m(徒歩8分)
◇開催期間:2017年3月26日(日)まで ※ぼろ布の展示は年間通して見ることができます
◇開館時間:10:00~18:00(最終入館は閉館30分前まで)
 ※展示入替えのため、一部休室の場合もあります。
◇休館日:毎週月曜日休館(月曜祝日の場合は翌日休館)
 ※大型連休などの場合は、ウェブサイトにてあらかじめご確認ください。
◇入館料(税込):一般1,080円/ 大・高生864円/ 中・小学生540円 / 未就学児童無料
 ◎一般団体料金は15名以上で864円(税込)
 ◎身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付き添いの方(1名まで)は 540円(税込)で入館して頂けます。
 (入館の際は障害者手帳等のご提示をお願いします)

2016年10月09日


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