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アド・ミュージアム東京:世界を幸せにする広告 GOOD Ideas for GOOD

常設展。1900年代を象徴するアイテムを10年毎に追うコーナーでは、時計や携帯電話といった生活に欠かせない電気製品の発展や、なめ猫のような時代のヒット商品が時系列で並びます

分かりやすくミャンマーの伝統的な画法で表現された絵は、商店に届けられる歯磨き粉のケース箱の内側に印刷されたもの。これらの絵は、その後店主によって学校などに届けられたそうです

企画展示室の様子。体験型の展示の前には家族連れから学生まで、大勢の人で賑わっていました

 昔どこかで読んだ話です。未来の世界では、誰もがCDを買って聴かなければいけないのですが、そのCDにはコマーシャルが録音されているのです。一番高価なCDだけCMが一切なく、一部の富裕層はそういったCDを楽しむことができる…といった筋だったかと覚えています。

 今は、スマートフォンのアプリケーションで世界中のラジオを聴くこともできますし、Youtubeで動画を無料で楽しむこともできます。ただ、それらの合間には、必ずと言うほど広告が挟まれていて、時折「有料会員は、コマーシャルなしでお楽しみいただけます」なんて広告が入るのも、まるでその小説の予言通りです。広告って、そんな、無ければ良いものなのでしょうか? それだけではないよ、と気づかせてくれるのが、今回訪れた《アド・ミュージアム東京》です。

 常設展では、広告の歴史が江戸時代まで遡って展示されています。江戸時代の歌舞伎の舞台で、さりげなく実在の商品名を舞台に登場させて宣伝効果を狙ったものや、大正時代、日本初のセミヌード写真を使った広告で世間をアッと言わせたサントリーの「赤玉ポートワイン」のポスターなど。時代を経ても変わらないアイデア、手法があるようです。

 何かを伝えるためには、ただ目立つだけではなく、ちょっと考えさせたり、あっと言わせたり、そういったある意味での「仕掛け」が必要で、それが広告ならではの面白さではないでしょうか。そうして百年以上人々が頭を悩ませてきた成果は、教育や啓蒙の場にも生かされるようになっています。7月30日(土)まで開催中の企画展「世界を幸せにする広告-GOOD Ideas for GOOD-」は、そんな広告の新たな可能性を見せてくれます。

 例えば歯磨きの大切さを、ミャンマーの伝統的な画法で表現し、歯磨き粉の入った段ボール箱の内側に印刷したもの。空になった箱は近隣の学校に配られて、ポスターとして使われたそう=《写真・中》。2011年の発表当時大きな話題を呼んだベネトンのキャンペーンは、中国と米国、北朝鮮と韓国といった対立する国々のリーダーがキスを交わしている…という衝撃の画像で、HATE(憎悪)の解除を示す造語《UNHATE》というメッセージを伝えました。

 2011年は、日本人にとって忘れられない年でした。東日本大震災後、テレビコマーシャルを控える会社がほとんどだったこと、またコマーシャルの枠を利用して大切な情報や応援メッセージが届けられたこと、まだ私たちの記憶にもしっかりと残っている当時の広告にまつわる記録も、常設展にはあります。世の中の流れを敏感につかみながら、一歩先をいくことが「伝える」ためには大切なようです。未来を読み解こうとする広告が、世の中を少しでも住みやすく、良いものにしていく為に使われる現代には、きっと希望があると感じました。

 ※冒頭の話は、筒井康隆さんの「にぎやかな未来」というSF作品でした。正確には、一番高価なCDにはコマーシャルどころか何の音も入ってなく、「一番価値があるのは静寂」というオチだそうです。

【ちょっと立ち止まって】
 最寄のJR新橋駅を、アド・ミュージアムが入っている「カレッタ汐留」とは反対側に出ると、「ニュー新橋ビル」があります。サラリーマンの聖地として知られる新橋だけに、ボリュームのあるランチを提供する飲食店、居酒屋などが天井の低いビル内にひしめき、タイムスリップしたような気分になる空間です。
 ちょうど訪れた土曜日には、ビル入口の広場で将棋のトーナメントが行われていて、休日を過ごす将棋ファンの方々で賑わっていました。「ニュー」であったのがいつのことやら…と揶揄されるレトロな風情のビルですが、再開発の噂もあるようで、それは少し寂しい気がします。こんな東京もあるんだ、と新鮮な発見があると思いますよ。

【展示会情報】
◇「世界を幸せにする広告 GOOD Ideas for GOOD」
◇場所:アド・ミュージアム 東京
◇最寄り駅:
 ・JR線、東京メトロ銀座線、都営浅草線「新橋駅」 徒歩5分
 ・都営大江戸線「汐留駅」 徒歩1分
◇開催期間: 7月30日(土)まで
◇開館時間:
 平 日……11:00~18:30
 土・祝日…11:00~16:30
 ※入館は閉館の30分前まで
◇休館日:日・月曜(祝日や振替休日の場合は翌平日)
◇入館料:無料

2016年7月12日


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